目を覚ますとすでに陽は登っており、

 

 

 

壁にかかっている時計は9時を指していた。

 

 

 

 

だいぶ寝てしまったようで、

 

 

 

 

他人の家で爆睡できる自分のガサツさを再認識した。

 

 

 

 

実はビンタン島ではほとんど寝れなかったので寝不足気味であったのだ。

 

 

 

 

というのも日本のように宿泊施設が整備されているものではなく、

 

 

 

 

島のコテージとは自然の中に木の箱が作られている程度であって、

 

 

 

 

蚊はもちろんのこと夜になると部屋の明かりのせいで、

 

 

 

 

「バン!」と突然窓に15センチほどの馬鹿でかいトカゲが張り付いたり、

 

 

 

 

外からは突然「ギョワー!」という聞いたことのない獣の声がしてマジでビビってしまった。

 

 

 

 

しかも海に近い事もあり風でドアがガタガタというたび、

 

 

 

 

何かが来た!と驚いて起きたりと、

 

 

 

 

予想しなかった事がたびたび起こったのである。

 

 

 

 

熱帯雨林気候の自然が私を一晩中ビビらせ続けたのだった。

 

 

 

 

そのためお酒も入ったことと、エアコンをつけて快適に寝むる事ができ、

 

 

 

 

頭も身体もだいぶ軽くなったようである。

 

 

 

 

リビングに行くと彼女はすでに起きていたようでパソコン作業をしていた。

 

 

 

 

挨拶をして昨日のお礼を伝え、シャワーを借りさせてもらった。

 

 

 

 

昨日の帰りに屋台で買った揚げパンで朝食をとった。

 

 

 

 

彼女は今日会社が休みということなので街を案内してくれる事になっていた。

 

 

 

 

10時過ぎにマンションを出て向かったのはチャイナタウンと呼ばれる中華街であった。

 

 

 

 

建物には赤い提灯のボンボンが吊り下げられ、

 

 

 

 

漢字の看板がずらりと並んだ光景はまさしく異国情緒あふれたものであった。

 

 

 

 

そんな街をブラブラ歩いている間に昼になったので、

 

 

 

 

シンガポールではポピュラーだというフードコートに連れていってもらった。

 

 

 

 

受付でチケットの束を買い食べたいお店でチケットをちぎって渡し、

 

 

 

 

残ったチケットを最後に換金してもらうシステムのようだ。

 

 

 

 

チケット売り場に並ぶと彼女が

 

 

 

 

「お昼ぐらいご馳走しますよ」という。

 

 

 

 

なんだかヒモのような感じだがそんな時は快く奢ってもらうのが俺流だ。

 

 

 

 

賑やかなフードコートで汗をかきながら食べ終わると、

 

 

 

 

今度はインド人街へ連れていってもらった。

 

 

 

 

普段は女性一人だと危ないので近寄らないが、

 

 

 

 

今回は慎也さんがいるから行ってみましょうと言ってくれた。

 

 

 

 

「あの先がそうですよ。貴重品は盗まれないよう気をつけてくださいね」と言い、

 

 

 

 

大きな道を渡ると一瞬で香辛料に包まれるエリアとなった。

 

 

 

 

街には人が溢れだし道端には何もせず突っ立ってる男がやたらと目につく。

 

 

 

 

歩き始めると絹やら洋服らの商店がズラーっと並び、

 

 

 

 

店先ではベンガル語なのか早口の言葉が飛び交っている。

 

 

 

 

道ですれ違うたびに上から下まで見られ、

 

 

 

 

いきなり「ジャパン」とか「ニンジャ!」と訳わからず呼びかけてくる。

 

 

 

 

インド人街には女性が少なく男性比率が高すぎる。

 

 

 

 

ほぼほぼ髭ズラの男しかいない。

 

 

 

 

これは見た感じからして危ないのも頷けた。

 

 

 

 

気づけば時刻は夕方になっており、

 

 

 

 

彼女が「そろそろムスリムの人たちの断食時間が終わる頃ですよ」というので、

 

 

 

 

歩いてマレー人街に連れていってもらった。

 

 

 

 

日が傾き空が夕焼けとなり、

 

 

 

 

街には歌のような呪文のような声が上空を流れて始めた。

 

 

 

 

これはイスラム教特有のもので毎日この時刻には流れているのだという。

 

 

 

 

道々には髭を生やした男たちが断食の開ける準備に取り掛かっているようで、

 

 

 

 

数人で重そうな荷物を運んでいたり、

 

 

 

 

並んだ屋台群では顔以外スカーフで巻いている女性たちが忙しそうに仕込みをしていた。

 

 

 

 

こんなに大勢のムスリムの人を見るのは初めてのうえ、

 

 

 

 

聞き慣れないマレー語と空を流れる呪文のような歌の中、

 

 

 

 

私は幻想的なイスラムの世界に魅了されていった。