次々と発着するバスを眺めていると、
中華系のオバサン2人組がドカッと隣に座り、
私に構わず中国語でやかましく喋り出した。
一人のオバサンは紙袋に手を入れては何かを口に入れ、
カリカリ音を立てて「プップッ」と吐き出している。
口に入れたモノを道に吐くとはなんて行儀が悪いのだ。
何をそんなに公共の場に吐いているのか見ていると、
ひまわりの種の殻のようだ。
ひまわりの種って食べるのかぁ。
驚きと共にあまりにも太々しい態度の姿を見ていると、
今度は片方の鼻を親指で押さえて
「フン!」とこれまた器用に鼻水を飛ばし始めた。
マジか!これが噂の鼻でっぽうか!
ティッシュを使わずに鼻水を処理するとは、中国人恐るべし。
これはデリカシーとか民度の問題ではなく完全に中国文化なのであろう。
そんなことを思いながら20分ほど眺めていると、
お目当てのバスが来たのか4〜5つのビニール袋を持って消えていった。
出発時間20分前となったので発着番号のところに行くと、
ちょうど私の待つバスが黒煙をあげて入ってくるところだった。
くすんだ緑色のバスには30人ほど乗れる感じだ。
バスに乗り込むとファンが止まった車内は蒸し暑く、
周りを見渡すと全て現地の人のようだった。
10分ほど経つとエンジンがかかり、普通に走り出したが、
なんとバスのドアが閉まっていない。
「おいおい、危ねーなー」と思いきや
よく見るとドアそのものが付いていなかった。
いきなり発展途上国に来た感じだ。
ドアが無い分、車内に風が入り込んで涼しかった。
こういう安全よりも実務的なところが東南アジアという感じがする。
やっと来たなぁと私は心が昂っていった。
私が目指した「メルシン」はマレーシア東部に位置する街で、
ティオマン島への発着場となっていた。
私は前回のビンタン島までフェリーに乗って行く旅の行程が気に入ってしまった。
コテージの目の前が浜辺というのが今でいう陽キャっぽく、
コレはこれでいい経験になるなと思って行ってみようと思ったのだった。