受付のインド人に「この辺で安く食べれるところはないか」と聞くと
「ある」と言い歩いて連れていってくれた。
その店は中華系の中年夫婦が足を椅子に投げ出して暇そうにテレビを見ていた。
メニューは全て壁に漢字で書かれており、
文字から何となく商品がわかる感じだ。
奥の方にはガラスの冷蔵庫があり、ビールらしきものが入っていた。
なるほどイスラム教の国でも中華系の店にはアルコールを置いているらしい。
私がプラスチックで出来た椅子をギギギーと引いて座ると
初めて私に気づいたようでエプロンにだらしなく手を突っ込みながら、
急ぐ気配もなくおばちゃんが近寄ってきた。
私が「ワンビア」と注文すると、特に返事も頷きもせず
冷蔵庫からビールを取って栓を抜きテーブルにドンと置いて去っていった。
接客業の世界的なスタンダードを学んだ気がした。
ただしアメリカで感じたアジア人に対する見下し感とは違い、
ただ単純にお客様という「概念」がないのだろう。
腹が減ってんなら作ってやるが、食べ終わったら金を払えよ的な
そこに全く相手の事を思わないサバサバした感じだ。
日本なら一発でクレームものの接客を受けつつも、
冷たいタイガービールで喉を潤していった。
しばらくするとテーブルに座っていたオヤジさんが
「フェアユーフローム?」と聞いてきたので「ジャパンだ」というと
「ジャパーン!」と笑顔で言ってきた。
そのオヤジさんざオバサンに何か言うと、
オバサンも驚いた感じで私を振り返っていた。
さっそく壁に書かれたメニューを注文すると、
オバチャンは軽く頷き厨房に入っていった。
しばらくすると中華鍋をカンカン振る良い音が聞こえ、
出てきた料理はナシゴレンという激うまチャーハンであった。